トランシーバー
防水型の無線機(インカム・トランシーバー)のオススメ機種
無線機(インカム・トランシーバー)は、様々な環境下で使用されるため、防水機能の有無が機種選定の際の決め手になる事もあるかと思います。
防水機能については、無線機(インカム・トランシーバー)のパッケージやカタログ、WEBサイトに国際規格に基づく保護等級(IPコード)で表示されます。防水機能を表すIPコードの数字は0〜8までの9区分に分けられますが、大きいほど防水性能が高くなるわけではなく、等級によって、雨などの水滴、水の噴流、水没など、防水性能を発揮する場面が異なります。そのため、無線機(インカム・トランシーバー)を使用する環境に応じてIP□6以下と□7または□8を組み合わせた多用途形防水トランシーバーを選択する必要があります。
この記事では、各防水保護等級の見方と考えられる使用シーン、多用途に適した防水トランシーバーの中でもおすすめの機種などを解説します。
トランシーバーの防水性能を表すIP表示の種類と見方
トランシーバーの防水性能は、IPコードと呼ばれる数字で表示されます。IPコードには、防水性能と、ホコリや粉塵などの侵入を防ぐ防塵性能を表す数字が並べて記載されています。
IPコードの意味
トランシーバーの防水・防塵機能は、IPコードにより分類されています。防塵性能はホコリや粉塵などから機器を守る数値で、IPの横の数値の左の桁(0~6の数字・第一特性数字)で示されます。防水性能は右の桁(0~8の数字・第二特性数字)で表されます。防塵・防水機能は「IP6□/IP□8」のように分けて表示されることもあれば、「IP68」のようにあわせて表示されていることもあります。
一昔前の防水機能は「防滴Ⅰ型」「防雨型」「防まつ型」といった国内規格(以下、『旧規定』)による保護等級で表されていましたが、現在は、国際規格に基づくIPコードによる保護等級の表示となっています。 2003年以前に販売された機器については、現在も旧規定による保護等級が表示されているため、以下の表では、IPコードによる保護等級に加えて、旧規定の保護等級についても紹介します。
防塵性能を表す特性数字(第一特性数字)保護等級 | IPコード | 防塵の定義 | 旧規定の呼称 |
0級 | IP0□ | 無保護 | - |
1級 | IP1□ | 手などが内部に侵入しない | - |
2級 | IP2□ | 指などが内部に侵入しない | - |
3級 | IP3□ | 工具の先端などが内部に侵入しない | - |
4級 | IP4□ | ワイヤーなどが内部に侵入しない | - |
5級 | IP5□ | 機器の正常な作動に支障をきたしたり 安全を損なう程の量の粉塵が内部に侵入しない | - |
6級 | IP6□ | 完全な防塵構造 | - |
保護等級 | IPコード | 防水の定義 | 旧規定の呼称 |
0級 | IP□0 | 無保護 | - |
1級 | IP□1 | 垂直に落ちてくる水滴からの保護 | 防滴Ⅰ型 |
2級 | IP□2 | 垂直より左右15度以内からの降雨からの保護 | 防滴Ⅱ型 |
3級 | IP□3 | 散水からの保護 | 防雨型 |
4級 | IP□4 | 水の飛まつからの保護 | 防まつ型 |
5級 | IP□5 | 噴流からの保護 | 防噴流型 |
6級 | IP□6 | 暴噴流からの保護 | 耐水型 |
7級 | IP□7 | 水に浸しても影響がない (水面下30cm〜1mの深さに、30分間没しても使用可能) | 防浸型 |
8級 | IP□8 | 水面下での使用が可能 | 水中型 |
使用する環境に適合した防塵・防水性能の無線機を選びましょう
たとえば室内での展示会やセミナーで無線機を使用に際は、粉塵の飛散や浸水のリスクは低いため、防塵規格は5級以上、防水規格は4級以上あれば機器の動作への支障はないでしょう。一方、屋外の工事現場で使用する際は、粉塵や浸水への備えが必要となるので、無線機の故障を防ぐため、防塵規格が6級以上、防水規格が5級以上の無線機(インカム・トランシーバー)を選択するようにしましょう。
汗や雨、水没にも対応する多用途形防水トランシーバー
上記で示したとおり、防水規格は、数字が大きければ防水性能が高いわけではなく、雨を防ぐ防滴型、飛沫を防ぐ防まつ型、浸水に耐えうる防浸型など、それぞれに適した使用場面があります。いくつかの場面にまたがって使用可能な防水トランシーバーを「多用途型防水トランシーバー」といい、複数のIPコードをもちます。 例えば、飲食店などで使用に適した機種は、キッチンなどにおける水濡れに対応可能な防まつ・耐水型の機種(IP54、56)です。屋外での作業など、汗や降雨が予想される場合は、防まつ形の機種(IP54)の使用がおすすめです。プールサイドなどの水辺で使用する場合は、水没や水濡れのリスクがより高まるため、上記に加え、耐水・防浸型の機種(IP56、67)の使用を検討するといいでしょう。
特定小電力トランシーバー
雨、飛沫の発生する水辺での使用が予想される場合は、防水規格4・5・7級を備えている、ケンウッド社UBZーM31の使用がおすすめです。 他にも、スタンダード社のFTH-314/FTH-314L、ICOM社IC-4300/IC-4300Lなど、防水規格が5、6級の機種を選択しても良いでしょう。 また、プールサイドや海など、水没の恐れがある場所で使用する際は、防水規格が水没に耐えうる7級である機種、スタンダード社FTH-314/FTH-314L使用がおすすめです。機種名 (メーカー名) | IPコード | 旧規定 | 通信距離 | 駆動時間 | 重さ | 希望小売価格 |
UBZ-M31 (ケンウッド) | IP54 IP55 IP67 | 4級 5級 7級 | 約1~2km | 26時間 | 110g | オープン |
UBZ-M51 (ケンウッド) | IP54 IP55 IP67 | 4級 5級 7級 | 26時間 | 120g | オープン | |
FTH-314 (スタンダード) | IP65 IP67 | 5級 7級 | 30時間 | 85g | 19,800円 | |
FTH-508 (スタンダード) | IP6X IPX7 | 7級 | 28時間 | 120g | オープン | |
IC-4300 (アイコム) | IP55 | 5級 | 33時間 | 120g | 15,800円 | |
CL70A (モトローラ) | IP6X IPX7 | 7級 | 33時間 | 95g | 19,800円 |
※駆動時間は、いずれもアルカリ単3乾電池1本、内蔵スピーカーを使用した場合の時間です。
※一部機種では中継器の使用が可能です。
(中継機について、詳しくはこちらの記事でご紹介しています)
防水・防塵性に優れたデジタル簡易無線機
デジタル簡易無線機は、特定小電力トランシーバーより最大通信距離が広いのが特徴で、スポーツ大会やアウトドア、イベントや警備など、屋外における広い範囲での通信に多く用いられます。 雨天の可能性がある屋外においては、IP54/55/67/68を有しているケンウッド社製TCP-D561の使用がおすすめです。また雪山や水場での使用に際しては、水没などに対応可能な防雨・防浸型の機種であるIP67/66/55/54のアイコム社のIC-D70/IC-D70BTも良いでしょう。
また、デジタル簡易無線機をレンタルで使用する際には、無線局の運用の特例に係る届出が必要です。ネクストギアーズでは、全てのレンタル利用に対して届け出を実施しておりますので、煩雑な手続きなく安心して無線機を利用できます。
機種名 (メーカー) | IPコード | 旧規格 | 通信距離 | 駆動時間 | 重さ | 希望小売価格 |
TCP-D551 (ケンウッド) | IP54 IP55 IP67 | 4級 5級 7級 | ~5km | 15時間 | 254g | オープン |
XVD450V (スタンダード) | IP67 | 7級 | 14.5時間 | 285g | オープン | |
IC-D70BT (アイコム) | IP67 IP66 IP55 IP54 | 4級 5級 6級 7級 | 13時間 | 240g | オープン | |
GDR4800 (モトローラ) | IP67 | 7級 | 17時間 | 335g | 生産終了 |
防水・防塵性に優れたIP無線機
IP無線機は、通信に携帯電話と同じ通信網を利用するため、最大通信距離が広く、混線に強いという特徴があります。IP無線機は、マラソンなどの大規模かつ大人数が参加する屋外行事や、輸送系の仕事などの場面で多く用いられます。 雨天の可能性がある屋外においては、IP67の防浸型の機種であるアイコム社製IP500Hの使用がおすすめです。
機種名 (メーカー) | IPコード | 旧規格 | 通信距離 | 駆動時間 | 重さ | 希望小売価格 |
IP500H (アイコム) | IP67 | 7級 | 全国 | 17時間 | 240g | オープン |
IP501H (アイコム) | IP67 | 7級 | 全国 | 17時間 | 240g | オープン |
801KW (SoftBank) | IP68 | 7級 | 全国 | 14時間 | 264g | オープン |
防水トランシーバーを取り扱うときの注意点
機器ごとの防水規格は、気温や圧力などを一定にした状態での試験によって決められます。そのため、防水規格の等級に記載されている範囲内で使用したとしても、機器に触れる液体が真水ではなく海水や薬剤などの溶解液であった場合や、機器が極端な高温、低温などの環境下にある場合などは、防水性能の低下につながるおそれがあります。また、雨の予報や水辺での使用が事前に分かっている場合は、あらかじめ防水ケースを装着するなど、必要以上に機器を水に濡らすことは避けましょう。
まとめ
防水トランシーバーを選ぶ際には、通信可能な距離や機器の重さ、電池の持続時間などに加えて、どのような環境で使用するかを具体的にしておく必要があります。トランシーバーの防水性能は、IPコードと呼ばれる防水規格で表され、0〜8までの等級は、雨や飛沫に対応するなど防滴・防雨・防まつ型、噴射される水に対応する防噴流・耐水型、水没に対応可能な防浸型などに分けられます。雨天が予想される屋外で使用する場合は、防雨型の防水トランシーバーを選択する、水場での使用に際し、機器本体の水濡れが予想される場合は防噴流・耐水型を選択するなど、用途や使用場所に応じて、どの機種を使用するかを検討しましょう。
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